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労働時間は1分単位で把握すれば良いのか?(2023/11/1)

 先日、ある事業所にうかがったところ、社長から「車を運転しながらラジオを聞いていたら、労働時間は1分単位で把握しなければならない、と言っていたけど本当ですか?」、との問い合わせを受けました。

  皆さんは、どう考えますか? この質問自体は、単純で分かりやすいのですが、答えは意外に奥が深いのです。

 念のために法規定や通達等を確認しますと、どこにも1分単位で把握しなければならない旨の記述は見当たりません。

 そこで、平成29年に公表された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を確認しますと、次のとおり記載されています。

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【労働時間の考え方】

 労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。そのため、次のアからウのような時間は、労働時間として扱わなければならないこと。

 ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として取り扱うこと。

 なお、労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであること。また、客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるものであること。

ア 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

イ 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)

ウ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

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 この記載からしますと、“明示であれ黙示であれ使用者の指揮命令下に置かれている時間はすべて労働時間”、ということになります。

つまり、“1分単位”どころか、30秒でも、15秒でも、1秒でも、0.1秒でも、……でも、使用者の指揮命令下にあると客観的に評価できるのであればそのすべてが労働時間である、ということを意味していると解されます。

  また、この把握時間を賃金の支払い額の計算に利用する場合は、さらに気を付ける必要があります。

“賃金支払い五原則”というものがあって、その中の一つに「全額払いの原則」というものがあります。これは文字どおり“すべての労働時間分の賃金を支払わなければならない”ということを意味していることになります。

“1分単位で”把握した時間数には、1分に満たない時間数が含まれていない訳ですから、その時間数を元に賃金計算しても厳密に考えますと15秒分や1秒分の賃金額が含まれていないため、“全額払い”にはなっていないことになります。

  労働時間は「1分単位で把握しましょう!」という掛け声は、15分単位や30分単位で把握する場合に比較して格段に精度があがりますので、より良い方向であることに間違いはないのですが、それでもまだもう一段の改善の余地はあるのではないかと考えられますがいかがでしょうか?

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